2012年6月9日土曜日

ひよこの眼の感想


山田詠美の短篇集『晩年の子供』に掲載されているひよこの眼、私は学校の教科書で読んだのが初めてだった。確か中学生の時だったように思う。

自分の中でなぜこの短編が印象に残っているのか不思議だった。この作品は青春真っ盛りの中学生には素直におすすめできるものではないと思う。これを教科書に掲載したことが驚きだ。

閑話休題、この作品は淡い恋心と死を見つめる眼との対比が主となっている。主人公の女の子は転校生が気になるのだが、ただ淡い恋心だけではなく以前に見たことが懐かしさを覚える眼を、その転校生がしていたことが気になっていた。実はこの眼は以前に飼っていたひよこが死ぬ直前にしていた死を見つめている眼と同じであることが作品の最後で語られる。転校生は無理心中に巻き込まれる。

この作品では自殺の理由はマクガフィンでしかない。それよりも彼が作中で最初ただただ死を見つめていたこと、しかし主人公との関係の中で確かに生きようとしたこと、これが最も重要なことだと思う。確かに生きようとした人間が不条理により生きることができなくなった、そんな彼との淡いひとときを描くこの作品は短絡的なハッピーエンドではない現実感あふれる作品だと思う。

0 件のコメント:

コメントを投稿